Oh my God...



パァン!パァン!!
「ちくしょう最悪じゃねぇか」
ホールに銃声が響いた少し後
女性客が一斉に我に返って黄色い叫び声を上げている時
隼人(はやと)はシャンデリアを見上げながら呟いた。
すぐに足を動かし人だかりを切り抜きながら
さっきまで目を離さずに見ていた人の手首を掴む
「っ?!!」
小さく叫ぼうとした彼女の口を押さえる
「しぃー静かに。」
煙草の臭いが染み付いた手の平を私はとんとんと触る
「隼人…」
「ほらこっちに」
ぐんぐんとそのまま手を引く。
様々な色があるように見えてよく見れば数色しかないドレス達や
モノクロに赤い花が咲いたスーツ達を通り抜ける
ドアを開けると湿気や排気ガスが充満した駐車場だった
ピカピカに磨いた黒い車がドアを開けて私を待っている
隼人は握っていた手をすぐ離し私を車に乗せる
「隼人…」
車に乗せられた後隼人を見上げる。
隼人はドアを閉めながらトランシーバーで
綾乃(あやの)様、今車乗ったから。出口辺りはお前に任せるわ』
こう言っていた声が聞こえたすぐ後開いている車の窓から
手を伸ばしてぎゅぅと握ってくれる
「例え俺が死んでもあんたのこと守るから安心しろ。」
口元に三日月を浮かべて手を離す
車が、動く。
万華鏡を覗いているような感覚に陥った後
すぐ、晴れてまた曇る
ついさっきまで隼人の温度の中にいたのに
もうそれもどこか消えてしまったの。
何度触れてもそこには一定の温度と一定の圧力しかないの。
ねぇ隼人…御願い死ぬなんて言わないで…。
万華鏡はまだキラキラと光りそして消えていく。

カツン、カツン廊下に靴の音と煙草の臭いが響く
「あ・・九鬼お帰り今犯人捕まえたんでしょ?お疲れー」
顔を上げると新菜(にいな)が缶コーヒーを投げてきた。
「…(まき)お前こんな時間にこんなとこで何してんだ?
愛しの綾乃様の部屋に俺がいない間に夜這いかよ」
プシュッと缶を開ける
「何馬鹿な事言ってんの?あんたの所為でしょドアホ。」
「…俺?」
驚いた顔を新菜にそのまま見せる
「そーよ。御部屋に篭もりっきりであたしにも話してくれないの
九鬼あんたなんであんなこと言ったわけ?」
強い目で睨む
「けどこれが俺の仕事だろ。」
灰皿にぐぃと煙草を押し付ける
「行くの?」
「何もしないよかマシだからな。」
苦笑しながら言う
「いくら温厚な綾乃様だからって・・刺されるかもよ?」
「あいつに刺されるんだったら本望じゃねぇか」
にぃと笑う。まだ中身の入った缶コーヒーを新菜の手に押し付ける
「ごちそうさん。」

“例え俺が死んでもあんたのこと守るから安心しろ。”
何度も頭で繰り返される同じ声同じ合間。
私を護る事が彼の仕事だなんてもう会った時からわかってるのに
あの約束は守れるものじゃないなんて紡いだ時からわかってたのに
なんでこう・・・・
隼人が死んじゃったらどうしよう…。
「綾乃様」
体に電撃が走る
ああ隼人の声だ…安心して全身が混乱する
隼人が手を伸ばして私の目を拭う。
怒ろうと思ってたのに。
「何泣いてるんですか」
息を次ぎながら笑う
「隼人…」
ポン、と背中を押されただけなのにそのまま隼人の胸になだれ込む。
腕に力が入ったのがわかる。
「あんなこと言ってごめん」

−ずっと傍にいてくれるの?
−傍にいてやるよ。
−じゃあ…約束ね?
−ああ。

始まりは、あの日。


あとがき
ひたすらこの2人大好きです。
シリーズとかにしたいけどそうするとラストまで続かないし笑
本当は隼人までもが綾乃の事姫扱いしてるって
綾野が怒るとかそういう系だったんだけど
けど何時の間にかテロになってます笑