猫
強いて言うならばモノクロに見えてた世界が
何かの拍子でカラーに見え始めたときに似ていた。
あたしの記憶はそういう風にいきなり戻ってきた。
全ての事があるべき場所に戻って
やっと自分の存在を肯定できる。
この部屋はいつも闇だった。
全ての物が黒か白で統一されていて
たまに吐き気さえ感じさせる歪みのない色。
そんな場所にその男は住んでた。
いつもどこか人をからかってるような態度
でも色を否定したような笑顔。
朔夜は、静寂を好む男で夜が好き。
たまに寝れないときにリビングに行くと
ベッドがあるのに真っ黒のソファーで寝てる朔夜を見付ける
安らかなけど張り詰めた時間。
「かわいい寝顔しちゃって…」
キスしたいて願った。
この人の隣にいたいって思った。
こんないつも夜を思い出させる場所に
朔夜1人置いていけない気がした。
そんな寂しそうに笑わないで。涙を背負わないで。
そう、感じた。
けどそれは全てあたし自身の願望で
朔夜の隣にはもう人がいて
その子はこの白黒だらけの冷たい部屋を七色に変えられるような
そんな笑顔を持っていた。
人に愛される優しい女の子。
朔夜が1人なんじゃなくてあたしが1人だった。
彼は寂しそうになんか笑ってない。
涙を背負ってもない。
出て行かなくちゃ。
ずいぶん前から同じ事を思っていた。
けど進まない気持ちに竦む足。
一緒にいたいって自分勝手な気持ちがあって
有愛ちゃんに少し意地悪な質問をした。
けど、有愛ちゃんは真っ直ぐと丁寧にあたしに朔夜への愛を紡いだ。
それを聞いてあたしも少し不思議と救われた。
あたしの持ち物なんて何もなくて
あったとしても別にとって置くものじゃない。
洋服も、お皿も、バスタオルも、写真も、鍵も。
取っておいたらいつかまたあたしの事を意図も簡単に傷つける。
出て行くのに必要なのは勇気だけ。
有愛ちゃんが家に帰るのを見送る朔夜が外に出た後
1番最初に思い出した電話番号に電話をかける
「もしもし幸田です」
「…もしもし?お母さん?」
「美姫・・?」
ほっとしたようなお母さんの声
「どこに行ってたの?」
「迷子になっちゃって…」
「……あほねぇ」
「お母さんの子だから。」
「まぁ無事でよかったわ…。後で清水君にも電話しなさい。
すごく心配してたのよ」
「亮が?」
「そうよ。じゃぁ早く帰ってらっしゃい。」
「もしもーし?」
「亮?」
電話が落っことされたみたいに大きな音が耳に伝わる
「ちょっとどうしたの?」
「ごめっ落っことした。ってか美姫?どこ行ってたんだよ」
「迷子になってたの。」
「マジで?あほだなお前…。じゃー迎えに行こうか?」
「じゃぁ駅まで来てちょーだい♪」
「へぇへぇ。」
朔夜へ
こんな風に出ていってごめん。
有愛ちゃんにもあたしが謝ってた事伝えてください。
実は前から記憶は戻ってたんだけど
朔夜の優しさに甘えてたの。ごめんね
今日のふたりを見て有愛ちゃんの愛の篭もった朔夜への言葉を聞いて
なんかあたしまで救われたの。
よくわからないけど。笑
お陰で家に電話する事もできてやっと居場所を見付けた気がする。
帰るべき場所があるってすごく素敵だね。
野良猫みたいなあたしを拾ってくれてありがとう。
ケータイのメルアド裏に書いておくから
何かあったらメールして。もちろん何もなくても笑
ほんとうにありがとう。
美姫
P.S. 朔夜のこと好きだったわ。
みっきーの記憶戻ったとこ書こうかと思ったんだけど
なんかよくわからないからちょっと淡々とした口調で
この子は最初すごい嫌な子にしようと思ってて
「苺」までキャラが悪かったんだけど
なんでこんなことしたんだろうって思ったら
よい子になっちゃいましたよorz
キャラのバリエーションが少なくて
やんなっちゃいますよ。
それにキャラの書き分けができないー泣
けどいつかこの子を主人公にして書きたいなぁ
亮くんとは幼馴染です。
恋とかそういう感情はないと思う
親友系?