絆
16年生きてきた中で
あたしは同性の親友を持ったことがなかった。
あたしの回りにいるのはいつも男で
班行動とか、お昼とか、電話相手とか、遊び相手とかその他もろもろ
気付けばいつも男ばかりと一緒にいた。
そう思い出してみれば女子中、高生活であたしは女の子の友達というものさえ持ったことがない。
っていうか目の敵にされてます?
「奪った、ヤった、騙し取った、ヤリマン、色目使ったなどなど。
有愛お前ずいぶん女子に人気だな。」
「無罪なのになんでこうなるんだか…
あたしだってこんなむさ苦しい友達ばっかじゃなくて女の子の友達が欲しいのになー。」
くるんくるんの金髪で恐ろしいほど童顔の理希が口を尖らせてこう言う。
「けどさぁなんで有愛が悪くないって誰もわかってくれないの?」
「うーん。あたしもあたしで過去5年間が悪かったの。
全然女の子の友達作ろうとしてなかったしねー。恐るべし女子の結束力。」
やってらんないわよ。こういいながら溜息を吐く。
「有愛が」
目であたしは満夜
の声を追う
「何よ。」
「かわいーから女子は妬いてんじゃん?」
「絶対そーだよっ!有愛めちゃくちゃかわいいもんっ!」
理希。
「なぁに?」
「あたしよりあんたの方がめちゃくちゃかわいいよ。」
そう、言うと理希は素直に大きな笑顔を作る。
「ありがとーっ」
鳴呼あたしが男で理希が女だったら告ってるのに。
神様は罪な奴だ。
こんな風に女子に白い目で見られてるっていうのに
あたしの彼氏は今日も学校に来てない。
「ねぇ満夜、
朔夜
は?今日も学校来ないの?」
「さぁ。あいつの考えることはよくわかんねぇよ。」
一卵性の双子の満夜と朔夜は恐ろしいほどよく似ていて
目を閉じればどっちの声かずっと傍にいるあたしでもわかんない
有愛。
朔夜の声は優しくて綺麗で
あたしの名前を呼ぶ時の声が
すごく愛が篭もってて嬉しくなる。
「せんせー。今日転入生いるって聞いたけど?」
「そうよ紹介するわ。転入生の
山田
理佐ちゃん」
先生はドアを開けて転入生を呼寄せる
「こんにちはー山田理佐ですっ。よろしく御願いしまーすvv」
にっこりと作った笑顔で山田さんは笑った。
「理希、満夜。ああいうかわいいぶりっ子がさっきの称号を掴むべきなのよ」
「そうか?」
あたしは後ろの満夜の席に振り返る
「どういう意味?」
「有愛の方が断然かわいい。」
一瞬朔夜があたしのことを誉めてるのかと思って
不覚にも泣きそうになった。
「ねぇねぇ今日も屋上で食べる?」
「いい天気だしね。屋上で決定。理希は先行ってていいよ。」
お財布を掴んでもう先に歩いてる満夜に追いつこうと軽く廊下を走る
「満夜!待って待って置いてかないで」
「…嫌。」
「えぇっ酷っ鬼ぃ!満夜の鬼ぃ!あんたまであたしのことシカトしないでよ!!」
その言葉で満夜は振り返る
「理希は人数に入ってないのかよ。」
「え、やっそういう意味じゃ!」
「有愛ってさ。」
「なぁに満夜。」
沈黙をあける。
「ロリコンだよな。」
牛乳にストローを刺しながら答える
「いやあたしロリコン違うよ。」
「…そうだろ。」
彼の視線がアンパンを頬張ってる理希の方に向けられる。
「なぁに?どうしたの?」
イギリス人と日本人のハーフの理希は
真青な目に金色の髪を見事受け継ぎそしてその純粋な笑顔。
「理希はかわいいねって話してただけよ」
「だからー僕より有愛の方がかわいいって!」
もう、胸キュンです。
「やっぱロリコンだよなぁ。」
溜息を吐く。
「え、何満夜?
今すぐあたしに唇を奪われその写真をネットで公開して欲しいって?
いいわよ。あたしはいつでも準備万端よ」
「すいませんでした。はい俺が悪かったです。」
「あらやだ。照れないでよあたしとあんたの仲じゃない」
クスクスと理希が笑う。
「満有愛のこと好きなんだから
キスはだめだけどほっぺにチューしてもらったら?」
………………
あたしは理希を見てから満夜を見る
「え?ちょ、え?」
満夜はただ真赤になるだけで何もいわない。
「嘘でしょ!?」
だって、え嘘だ。え、え、え?
「………理希。」
「んー?」
真赤になりながら理希を強く睨む。
「なんでキスはだめなんだよ。」
「え、そこなの?問題はそこなの?」
だって、
「満だけじゃなくて僕も有愛のこと好きだもん。」
少し沈黙があいた後2人があたしに向って笑った
「有愛?ジョーダンだよっ。」
「…え、まさか本気にしたのか?」
あたしはびっくり泣きして2人の手を握り締めた
ほんと、一瞬恐かった。
「っていうか何だったのあれは!
あいつらも言っていいことと悪いことがあるでしょ?!
ほんと信じられない。ってか聞いてる?朔夜!!」
朔夜に向って電話から叫ぶ
「聞いてる聞いてる。まー許してやれよ。それか復讐しろよ復讐。」
「あたしはそんな悪女みたいなことはしません!」
「じゃー冗談じゃなかったらどっちが好きなわけ?」
「…どっちも友達?」
「………」
「だってあたし好きな人いるし
アピられてもなんか生活しにくい?
っていうか一緒に過ごしにくい気もしちゃうし。
あたしあの2人にべったりだし。
…朔夜いないし。」
最後の言葉をゆっくりと紡いだ。
「まぁ、泣くなよ。」
「泣いてないよ。」
「心が泣いてる。」
「「…………」」
「知ってるでしょ?」
もし、
もし、
あたしの、心が
泣いてるとしたら、
多分
多分
それは
あんたの所為だよ。
「……あたしが満夜じゃなくて、理希じゃなくてあんた朔夜が好きだってこと。」
「俺も好きだよ。」
あたし達は過去何度も同じ言葉を繰り返した。
まるで離れてる空間を埋めるように。
いつも傍にいるときには不安なんてないのに
傍にいないと壊れちゃう。
「朔。明日学校来て。」
「何、もう限界なの?」
「うん。寂しくて死んじゃうよ。」
電話先で朔が笑ったのがわかる。
「朔夜」
「何?」
「大好き。」
「有愛」
「なぁに?」
「……愛してるよ。」
甘っ!!
何だこの甘さは!!
美姫ちゃんのことは朔夜あんま何も思ってません。
同棲してるけど有愛ラブ。
今朔夜が休んでる理由が美姫ちゃんの風邪と記憶喪失のため。
設定的には「雨」の次の日かな。
有愛も美姫が記憶喪失って知ってるんでそんな不安じゃないです
朔夜がいないと寂しくて死んじゃう系。
けど美姫にしてみれば奪う気満々なんで
ちょっとかわいそうだー。