Merry Christmas



過去への”もしも”は禁物だ
未来の”もしも”は無限でも


口に出しては
いけないよ

























「ホワイトクリスマス。」


カーテンの向こうの雪化粧を見て、忌々しそうに彼女が呟いた。
イベント毎で盛り上がる今日この頃。
お姫様は御機嫌斜め。


「カーテン開けるとひんやりする。」


僕の言葉に反応すらしない。




クリスマスと言えば恋人同士の日であると言ってもいい。
現に、両親はいい歳して二人で旅行だし
この日はいつも暇そうな友人も予定があったり。

街はイルミネーションで賑わって
赤地に白のファーが付いた衣装をよく見かけたり
眩いばかりのツリーライトで



目が眩む。




「カップルの日ならその熱で雪が融ければいいのに。」

「あー……それは無理だろうね。」


オーブンのタイマーが


「融かしてみる?」



遠くで鳴った。



「外も寒いけどアナタも寒い。」

「愛読書はロミオとジュリエット!」

「そんな情報心底要らない!」


音もなくキッチンに向かう後姿を見送りながら
小さく息を吐いたのを君は知らない。


「冷たいなぁ。」


まるで外で舞う雪みたいだ。


「それでどうするのー? チョコ? 生?」


キッチンから顔を覗かせて、彼女が言った。
甘いものが嫌いだと解っていて尋ねてくるのだから困ったものだと
首を捻って、右を指差す。


「生じゃないの?」

「糖尿病で死にたくないからね。」


そうしてまた引っ込んでいく。











窓の外はまだ雪だ。


しんしん
しんしん

降り続いて
明日の朝には積もるだろう。

















「ねぇ」


ケーキの縁に沿って蝋燭を等間隔に並べながら
たまに指についたチョコレートを舌で舐めとり
君の言葉が思考を切り裂く。


「何?」


それをじっと見詰めながら返事を返した。
視界の端でチカチカと、蒼と白の装飾で彩られたツリーが
存在を主張するように光る。


「ちょっと聞いてほしいんだけど。」


じっと、大きな目が僕を見た。


「もしもの話よ?」

「ん?」

「もしも、今日突然世界が滅びたら後悔する?」


質問の意味がよく呑み込めなかった僕がもう一度訪ねると
君は同じ科白を、同じ速度で繰り返した。
まるで機械みたい。


「幸せだよ。」

「それじゃあ、もしもあの日に出逢っていないままこの日が訪れたら」








幸せ?





「君に一つ教えてあげようか。」


ぱたん、と読んでいた雑誌を閉じた。
その雑誌を隣りへ。
恐らく後何時間後、何分後には君が座るだろう場所へ。


「過去は闇、未来は光」

「恥ずかしい科白。」

「過去への”もしも”はネガティブ傾向にあって…」


ぎっ、とソファーが軋む。
そろそろ買い換えなきゃいけないと誰かが言ってた気がするけれど
今の僕には関係ない。


「未来への”もしも”はポジティブ傾向だけど。」


僕と君を隔てたテーブルと言う名の星の川を
ゆっくり距離を近づけながら渡っていく。


「口に出しては、いけないよ」




過去はいつも暗すぎて
未来はいつも明るすぎる




「君が何を言いたいのか、よく解った。」


前にも後ろにも進めずに
また一年が過ぎようとしている今日。

押し潰されそうな不安と
明日はどうなるのかという恐怖と
そんな中得られる少しの喜び。



「今日は言ってなかったね! 愛してる!」

「アナタに甘い言葉を求めたアタシが馬鹿だったわ。」

「甘いじゃないか! 蕩けるよ。」

「言葉が一々厭らしい。」

「失敬な!」








呆れて笑う。
冬の夜。












「「 Merry Christmas! 」」











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Merry Christmas

記念ノベル。
前に小話アップしてた”LOVE”のカップルで
甘めの小説を目指して玉砕フォー!!
〔落ち着いて〕

書きやすいのにどうしてか上手くいかない
スランプ時に書くからいけないのか。
クリスマスって言われてもピンとこない。


なにはともあれ
聖なる夜に駄文をプレゼント。

フリーだけど要らないね!
慈愛深い方はこっそりお持ち帰りください。〔笑


さーて!
どこかクリスマス企画やっている所ないかなっ!
〔漁る気満々〕



完成
2005/12/18

掲載
2005/12/24_25



どっどうもです!晴です晴です晴です(しつこい
うわーーーーっ貰ってきちゃいましたよ!!
ALKALOIDの松前イツキ様から!!頂いてきました掻っ攫ってきました!!
イツキ様の文章の書き方が好きです。
押し付けるものがないというか、雪みたいですよね。
ゆっくりと染みる。そんな感じがします。
そしてこのカップル大好きです!!
もう素敵すぎて大好きです。大好物ですご馳走様でした
これだけでご飯3杯いけちゃいます!!
ああああこんなステキ小説をほんとフリーで頂いちゃっていいんですか?
ってか私のとこなんかに置いちゃっていいんですか!?
プレゼントの所にだけお客様が増える気がします笑
ほんとは25日にUPする予定だったんですけど、
停電しまして(爆1日遅れです・・・・
ではでは様ステキ小説ほんとうにありがとうございました!!
まだストーキングしてますから(ヤメイ
どうぞ夜道にはお気を付け下さい

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