「行ってらっしゃい。」
理希(りき)はあたしの両手を握って背中を押すように言ってくれた。
「行ってきます。」
あたしもきゅっと理希の手を握って弱々しい笑顔を見せる。
ゆっくりと理希の手を離しながら階段を登る。
一段、一段。ゆっくり登る。
大丈夫、大丈夫。
頭の中でお呪いを繰り返しながら
マンションのインターフォンを押す。
『はい。』
朔夜(さくや) の声で安心したあたしはもう恐くなくて
ふざける余裕もできてきた。
「あたしよダーリンv」
『ああオッケー。』
ガシャン、とまるで理希の故郷イギリスの重いドアみたいに
自動ドアは開かなかったけど
あたしにはそう感じた。
いざ、魔王の帝国へ!

彼氏の部屋に入るのにあたしはドキドキしっぱなしで
インターフォンも押せなかった。
有愛(ありあ) 。やっぱそこにいた。」
いきなりドアが開いて優しい朔夜が出てきた
「久しぶり」
会ったらなんか言ってやろうと決めてた言葉も何も吹っ飛んだ。
たった1日しか会わなかっただけなのにこんな不安になるなんて
やっぱ同居の件は反対すればよかったな。
「…ほらそんなとこ突っ立ってないで入れよ。」
ドアによっかかりながら朔夜はあたしを招き入れる
「お邪魔します。」



パタン。


ドアが閉まる音がした同時に
朔夜が後ろからぎゅうとあたしに抱き着く
「有愛」
一文字、一文字愛の篭もった声であたしを呼ぶ
「会いたかった」
朔夜の腕の中であたしはぐるりと回って
1日ぶりのハグをする。




「「………………」」






ガタン。
「…!?」
あたしは朔夜の腕の中で身を固くする。
「おい幸田(こうだ) 邪魔すんなよ。気ぃきかねぇな。」
朔夜が不機嫌な声でこう言った
「ごっめーん」
正直言うと彼女の第一印象は、美人さんだった。
気が強そうな唇
固そうな黒くて真っ直ぐした髪
「有愛こいつが幸田美姫(みき)。」
「初めまして、櫻井(さくらい)有愛です」
朔夜と手を握りながら笑顔で挨拶する。
幸田さんはあたしのことを睨み付けて何もいわずに朔夜の部屋に普通に入ってった。
「おい幸田。」
朔夜は機嫌が最悪で彼女を怒ろうとする
「朔夜!」
背伸びしてホッペにキスをする。

『じゃぁ勇気が出るお呪いしたげる。』

理希の声が頭の中で響く。
勇気の出る、お呪い。
「幸田さんは記憶がなくて朔夜しか頼る人いないから不安なんだよ。
あたしは全然平気だから怒んないであげて」
「……」
小さく溜息を吐いた
「ああ。」

「櫻井さん」
朔夜がお茶を煎れてくれてる間
初めて幸田さんがあたしに声をかけた
「なぁに?」
「不安じゃないの?彼氏が他の女と同居して。
その女とヤってるかもしれないのに?」
あたしは幸田さんの瞳を見て言った
「全っ然。」
にっこりとあたしは笑顔を浮かべる。
「朔夜は浮気するようなそんなふざけた男じゃないって知ってるから。」
「すごい自信ね。」
「自信?」
あたしは怪訝そうに眉をひそめた
「自信なんてないわよ。」
今度は幸田さんが怪訝そうに眉をひそめた
「どういう意味?」
あたしたちはまるで睨み合うみたいに視線を交わした
「自信じゃなくて朔夜への愛。」
呆れたように彼女はあたしを見たからあたしはにっこりと笑っといた。

「理希のお呪いが効きすぎたのかもしれないわ。」
あたしは朔夜の腕にピッタリと引っ付きながら言う。
「お呪いって?」
「朔夜のマンションに入る前に理希、ホッぺにちゅーしてくれたの。
『じゃぁ勇気が出るお呪いしたげる。』ってv」
朔夜は呆れたように溜息を吐く。
溜息は白くなり空に消えた。
「やきもち?」
「少しだけ。けど有愛は浮気するようなそんなふざけた女じゃないって知ってるから全然平気。」
「聞いてたの?」
あたしの方を見て舌を出す
「まぁな。」
あたしは小さく困ったように笑う







「なぁ。」
「何?」
「何舐めてたわけ?めっちゃ甘いんだけど」
「いちごミルクキャンディー。」
「うげ。」



第4回ですね
色々話がちゃっちゃか進んで嬉しいです
けど終わりを考えてないんで困ってます笑
有愛は言うときは言う子なんで
ちょっと喧嘩してる風にしちゃったけど決して喧嘩じゃなくて
朔への愛を真っ直ぐに示してただけです。
パワーオブザラブって奴ですね!(何
前回の「思」と違って
ぶっちゃけ「苺」はタイトル悩みました
候補は
「愛」 「勇」 「言」 「進」 とかとか
。 漢字1つて何気に難しかったです。
「キス」が使えないんでちょっと困ったけど
いちごミルクキャンディーを舐めさせて
「飴」だと音的に被るしって事で「苺」
最後朔と有愛はキスしてました。
満最近少ししか出て来てないし。
けど朔と満はすごく書き分けにくいです。orz
なんで双子いっぺんに出しちゃったんだか・・・(自業自得
そして朔と満2人とも彼等の目線で書くの苦手です笑